発酵食品の驚くべき4つの特徴~小泉 武夫 博士 インタビュー~

小泉武夫 博士(発酵学者) 特別インタビュー

発酵食品の驚くべき4つの特徴
  • 腐らない

発酵食品には4つ大きな特徴があります。1つは、発酵をさせると腐りにくくなるということです。冷蔵庫のない時代は食品を発酵させていました。

 

  • 免疫力を高める

2つ目は、免疫力をものすごく高めるということです。スタンフォード大学の教授であり微生物・免疫学の分野で世界的に著名なソネンバーグ夫妻による「腸科学(早川書房)」という本でも味噌、納豆、キムチなどの発酵食品が免疫力を高めるということは紹介されています。

発酵食品が免疫力を高める理由は大きく2つあります。まずは、生命体が体の中に入ってくるという大きな特徴があります。例えば納豆一粒に微生物は約1,000万匹、ヨーグルトであれば2億匹の乳酸菌が含まれています。菌体が腸を通過する時、人間に免疫を作れ、というスイッチを押します。すると、正常細胞が免疫細胞になります。免疫の免と言う字は免れる、疫と言う字は病気と言う意味ですが、文字通り免疫細胞は病気を免れる細胞で、免疫力が高い人はウィルスが体に入ってきても病気に罹りづらいです。国立がん研究センターの発表では、毎日納豆を食べている人は、そうでない人に比べてがんになる割合が3割減っていることが明らかになりました。
 
また、赤ん坊は生後1年間病気に罹りづらいと言われています。それはなぜかというと、赤ん坊は母親の母乳に含まれる「ラクトフェリン」に免疫を高める効果があるからです。そして、赤ん坊は毎日少しずつ新生細胞が増え続けているため、免疫力が高いのです。

現在は新型コロナウィルス感染症拡大で混乱が続いていますが、基本的には免疫力を高める発酵食品を食べている地域・国では感染者は少ないです。日本では秋田県、青森県、岩手県、山形県、福島県など、東北地域は全国と比べたら感染者数が少ないです。一番の理由はそれらの地域で、発酵食品の文化が根付いており日常的に食べられているからです。

日本には、大根の漬物だけで80種類ほどあり、漬物全般に至っては 3,000種類ほどあります。日本という国は発酵王国と言って間違いないでしょう。
 
地球上で発酵食品の多い地域は東南アジア、東アジアに限られています。これらの地域はアジアモンスーン気候により、湿度が多く温度も高いため、発酵食文化が根付いています。例えばメコン川沿いのベトナム、タイ、カンボジア、ミャンマー、ラオスなどでは発酵食品が多く穀倉地帯です。

 

  • 匂いと香り

3つ目は、発酵食品には特殊な味と香があります。牛乳とチーズ、大豆と納豆をイメージして貰えばわかると思いますが、発酵によって特別な匂いと味が出てきます。

 

  • 究極の自然食品

そして最後の特徴は、発酵食品が究極の自然食品であるということです。味噌や納豆のように、発酵食品には一切添加物はついておりません。私も発酵食品のおかげで元気に過ごしています。毎日味噌汁、納豆などの和食を食べれば元気に過ごすことができます。

和食について、私は数年前 日本政府がユネスコに和食を無形文化遺産として登録をするときに、委員会のメンバーをしていました。発酵食品は和食と切っても切り離せないものです。和食の定義には、一汁三菜という言葉がありますが、これは後から出た言葉であり原点は一汁一菜です。つまり、ご飯と味噌汁とおかず一菜で和食が成立します。そして、実はおかず一菜は特定されており、香の物つまり漬物があれば和食となります。

私は発酵学者として、日本は発酵の国であると和食を強い一つの目玉として発信していきたいと考えています。


 

発酵の保健的効果

近年では、発酵が保健的機能を有していることがわかってきました。例えば、ヨーグルトには整腸作用、がんや高血圧の予防、老化の抑制、納豆には血管内コレステロールの排除、血管溶解、脳卒中や心筋梗塞の予防、味噌には胃がん、動脈硬化性心臓疾患、胃潰瘍や十二指腸潰瘍の予防などの効能があります。

医療の場面で発酵菌が作る抗生物質は、人間を伝染病から救ってきました。また、抗がん剤や抗ウィルス剤など、難病対する薬のほとんどが発酵生産物です。
発酵の医療の可能性はすごいですし、実用化もされています。たとえば、納豆菌からナットウキナーゼを取り出して血栓症患者に投与しています。ビタミンもホルモンも発酵です。点滴用のアミノ酸は全部発酵で作ります。

 

小泉武夫博士のフォラーム(4月25日)はこちら